仕事中に怪我をしたら国が補償してくれるの?

2022年3月21日

仕事中や通勤中に怪我したら、通院費用や会社を休んだ場合の給料が心配になりますよね?そんな時、国から補償を受けられるって知ってますか?この記事では、国から補償を受けられる制度、労災保険制度について詳しく説明していきます。

労災保険制度について

労災保険とは、雇用されている立場の人が仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。正しくは、労働者災害補償保険といい、この名のとおり労働者やその遺族の生活を守るための社会保険です。労災と略すこともあります。

ここでの労働者とは、会社に雇われている正社員だけをいうのではありません。パートやアルバイトも含みます。そして、ケガや病気を対象とした社会保険といえば、健康保険を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、労災の対象は業務上および通勤途上に起因としたもののみが対象となります。
大きな違いは、労災の補償の対象となると、療養の費用の自己負担がない点、また、休業時の手当についても健康保険の傷病手当金よりも手厚い補償となっている点です。
なお、労災は労働者を一人でも雇用する会社に加入が義務付けられており、ほかの社会保険と違い、その保険料の全額を事業主が負担します。

どんな場合に労災の対象になるの?

そもそも、どのような場合に労災の対象となるのでしょうか。
その対象は大きく、仕事中の「業務上災害」と、通勤途中の「通勤途上災害」に分かれます。

【業務上災害】

まず、業務上災害とは、業務上でのケガや病気、障害や死亡をいいます。そのため、たとえば業務時間内であっても、業務に関係のない私的な行為に起因するケガや、故意によるケガなどは該当しません。

業務災害と認められるケースの例としては、以下のようなものがあります。

  • 工場での作業中に、ベルトコンベヤーに指が挟まりケガをした。
  • 会議室に向かうために社内を歩いていたら、廊下に積んであった商品が崩れて脊椎を損傷して障害を負った。
  • 会社の車で取引先に行く途中に交通事故に遭ってケガをした。
  • 上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗(しつよう)に行われ、うつ状態と睡眠障害になり精神科を受診したところ、うつ病と診断された。

【通勤途上災害】

次に、通勤途上災害とは、労働者が家と職場との往復など、所定の移動中に被ったケガや病気、死亡などをいいます。ただし、寄り道して合理的な経路から外れたり、経路の途中で通勤と関係のない行為をした場合には、その間およびその後の移動は対象外となります。なお、例外的に、日用品の購入およびそのほかこれに準じる行為は認められています。

通勤災害と認められるケースとしては、以下のようなものがあります。

  • 自宅から会社に出勤する途中、駅の階段で後ろから人に押され転倒して怪我をした。
  • 車で通勤中、路地から人が急に飛び出してきて、回避した時に電柱に衝突して怪我をした。

労災の補償内容

ここまで、どのようなものが労災の対象となるものをみてきました。では、要件を満たして労災と認められると、どれくらい給付が受けられるのでしょうか。
給付は、補償の種類によって分けられるため、その種類ごとに順番に見ていきます。

①療養補償給付
ケガや病気が治癒するまでの療養の現物給付(労災病院、労災指定医療機関の場合)またはその費用が給付されます。ここでの治癒とは、症状が固定された状態(一般的な医療を行っても、その医療効果が期待できない状態)を含みます。そのため、症状が固定した場合には、療養補償給付は終わりますが、障害がある場合には障害補償給付の対象となります。

②障害補償給付
・障害補償年金
ケガや病気が治癒(症状固定)した後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったとき、障害補償年金が給付されます。
・障害補償一時金
ケガや病気が治癒(症状固定)した後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったとき、障害補償一時金が給付されます。

③休業補償給付
ケガや病気の療養のため労働することができず、賃金を受けられないときに、休業4日目から給付されます。休業4日目から休業1日につき給付基礎日額(対象災害が発生した日など所定の日の直前3か月間における賞与を除いた1日あたりの賃金額)の80%相当額(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が給付されます。

④遺族補償給付
死亡したときには、遺族の人数などに応じた遺族補償年金と遺族特別年金、遺族特別支給金が給付されます。
ただし、遺族補償年金を受けることができる遺族は、亡くなった人の配偶者(内縁関係を含む)や18歳の3月31日までの子や60歳以上の父母などで、死亡当時その収入によって生計を維持されていた人に限られます。これらに該当する遺族がいない場合には、遺族補償一時金が遺族に給付されます。

⑤葬祭料
死亡した人の葬祭を行うときに、葬祭を行う者に対して給付されます。

⑥傷病補償年金
ケガや病気が療養開始後1年6か月経過しても治っていない場合や、障害等級に該当する場合に、障害の程度に応じて給付されます。

⑦介護補償給付
障害補償年金または傷病補償年金受給者のうち、障害等級が第1級の者、または第2級の精神・神経障害および胸腹部臓器障害の者が、現に介護を受けているときに給付されます。ただし、病院などに入院中や障害者支援施設で生活介護を受けている場合や特別養護老人ホームなどに入所している場合には、施設において十分な介護サービスが提供されているものと考えられるなどの理由により給付されません。

⑧そのほかの給付
・二次健康診断等給付
直近の定期健康診断などにおいて、血圧、血中脂質、血糖、肥満にかかる測定のすべての検査で異常値と診断されていながら、脳血管疾患または心臓疾患の症状を有していないときに給付されます。

労災の申請方法

このように、業務上あるいは通勤途上の、ケガ、病気、休業、障害、死亡などにあてはまれば、手厚い補償を受けられる労災ですが、給付されるまでの手続きなどはどのようにすればよいのでしょうか。
さまざまな給付がありますが、いずれも申請手続きが必要となります。どのように申請し、給付されるのか、その流れをみていきましょう。なお、ここでは自らの手続きを行う場合の方法をお伝えしますが、会社によっては代わりに手続きをしてくれることもあります。

手順1.補償の種類に応じた請求書を手に入れる

まず、所轄の労働基準監督署あるいは厚生労働省のホームページから、補償の種類に応じた所定の請求書を入手します。

手順2.請求書に記入する

請求書の記入項目には、事業主が災害の発生状況などの記載内容どおりであることの証明(労働災害や通勤災害に該当することの証明ではなく)のための署名欄もあります。事業主の署名を得られなければ記載内容の不備となりますので、その場合には労働基準監督署に相談しましょう。
また、補償の種類によっては、療養などをした医療機関などに傷病名や傷病の経過などを記載してもらう欄もあります。

手順3.請求書と添付書類を労働基準監督署に提出する

請求書が完成したら、補償の種類に応じて必要となる添付書類とともに労働基準監督署に提出します。労働基準監督署は、その請求書の内容に基づき調査を行い、労働災害や通勤災害に該当するか判断をし、その結果により給付が決定されます。なお、このように調査があるため、業務上災害や通勤途上災害といえる証拠を残しておくと安心です。

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Posted by hatarakiman