算定・月変ってなに?

2022年3月21日

算定・月変って聞いたことありますか?社会保険料を算出するタイミングは以下の4つになります。

  1. 入社したときに行われる「資格取得時決定」
  2. 毎年行われる「定時決定」
  3. 給与に大幅な変動があったときに行われる「随時改定」
  4. 産前産後休業者・育児休業者が職場復帰後に給与に変動があったときに行われる「産前産後休業・育児休業終了時改定」

算定は2、月変は3の事を言います。以下詳しく説明して行きます。

毎年7月の「定時決定」

算定は「定時決定」と言い、7月1日時点の状況をもとに標準報酬月額を決定するもので、4月~6月の3ヶ月間の給与支払状況を踏まえて決定します。

毎年1回、標準報酬月額を見直すことで、昇給などで給与が変わった場合でも社会保険料に反映される仕組みです。決定された標準報酬月額は原則その年9月から翌年8月保険料まで1年間適用されます。

ただし、6月1日~7月1日の間に被保険者資格を取得した人や、7月~9月までのいずれかの月から標準報酬月額が改定される人では、定時決定は行われません。

報酬月額の算定方法

  1. 4月~6月に支払われた各月の給与額を集計する
  2. 支払基礎日数が17日以上ある月を確認する
  3. 対象となる月の給与額を合計し、対象月数で割って報酬月額を算出する
  4. 算出した報酬月額を等級表に当てはめて、新たな標準報酬月額を求める

給与額の集計で対象になるのは4月~6月に実際に支払われた給与で、集計の対象になる月は支払基礎日数(給与計算の対象となる日数)が17日以上ある月です。

例えば4月~6月の3ヶ月すべてが対象であれば3で割り、対象月が2ヶ月しかなかった場合は2で割ります。3ヶ月すべて17日未満の場合は、従前の標準報酬月額で定時決定を行うため金額に変更はありません。

なお短時間労働者(4分の3要件を満たす短時間労働者)の場合は決め方が異なり、17日以上の月がない場合でも15日以上の月があれば、その月を対象として報酬月額を算出します。また特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は、17日以上ではなく11日以上支払基礎日数がある月を対象として計算します。

具体的な計算例を見ればわかりやすくてイメージしやすくなるので、例えば協会けんぽに加入している会社のケースで標準報酬月額がどうなるか、見てみましょう。

例.  協会けんぽに加入している東京都の会社4月の報酬月額:基本給25万+交通費1万円+残業手当5千円=265,000円5月の報酬月額:基本給25万+交通費1万円+残業手当3万円=290,000円6月の報酬月額:基本給25万+交通費1万円+残業手当0円=260,000円報酬月額=(265,000+290,000+260,000)÷3≒271,666円 ※1円未満の端数は切り捨て標準報酬月額は、健康保険が21等級、厚生年金保険が18等級の28万円です。

4月〜6月の給料で9月から1年間の社会保険料が決まってしまうため、3月〜5月(4月〜6月給料)に通常より残業が多い場合、注意が必要です。残業が多いという事は、その月の給料も増える事を意味しますが、9月以降の社会保険料の増加にもつながります。

例えば4月~6月の残業を意図的に減らす事で9月以降の社会保険料を抑えることができます。

一方、標準報酬月額は健康保険から支給される「手当額」や老後に受け取る「年金額」の計算にも使われます。例えば、被保険者が病気や怪我等で働くことができず、会社を休む場合、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。この支給額は標準報酬月額を基準に計算されます。

また、産前産後休業中に支給される「出産手当金」も同様の計算式で決まるので、標準報酬月額が高い方がもらえる手当額も多くなるということです。

そのため、標準報酬月額を低くして社会保険料額を抑えることが得かというと、一概にそうも言えません。社会保険料は抑えられるが、何かあった時の健康保険の「手当」や老後に受け取る「年金額」は減ってしまうという事を正しく理解し、うまく制度を活用して下さい。

給与の額に変更があった時の「随時改定」

月変は「随時改定」と言い、昇給や降給などで基本給などが大幅に変動したときに標準報酬月額を改定して決め直すものです。次の3つの条件に該当する場合は随時改定の対象となります。

随時改定の条件

  1. 基本給などの固定的賃金に変動があった
  2. 現在の標準報酬月額に2等級以上の差が生じた
  3. 給与の変動が変動月以後3ヶ月間引き続き、勤務した日数が17日以上(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)あった

報酬額が大きく変動した場合には実態を反映することを優先して、定時改定まで待たずに随時改定によって標準報酬月額が改定されます。逆に3つの条件のうち1つでも該当しなければ随時改定の対象となりません。