育児休業ってなに?

2022年3月21日

1.育児休業(育休)とは?

育児休業(育休)とは子どもを養育する義務のある労働者が法律に基づいて取得できる休業のこと。この制度は、仕事と育児の両立を図るという目的のもと生まれました。法律上、労働者が取得できる権利であるため、育児休業の申請があった場合、企業は拒む事ができません。

育児休業と育児休暇の違い

よく混同されがちな育児休業と育児休暇の違いについて説明します。それぞれのポイントと差異は以下の通りです。

  • 育児休業……法律に基づいて取得することのできる休業制度で、さまざまな権利が法の下保護されており、収入減を補う給付制度もある
  • 育児休暇……休暇中に育児をする、育児のために休暇を取得することだが、法律の適用外のため権利の保障や給付制度などはない

育児休業と育児休暇の大きな違いは法によって定められているか否かです。一定の条件を満たせば育児休業給付金が支給される育児休業と異なり、育児休暇は企業ごとで定めている休暇の制度です。例えば、有給休暇とは別に、出産日から5日間休む事ができるなど、特別休暇を付与する企業もあります。中には育児休業と併せて利用できる場合もあります。

2.現行の育児休業制度の概要

育児休業は、申し出により子どもが1歳(一定の場合は、最長で2歳)に達するまで取得できる制度です。

さらに両親が協力して育児休業を取得できるよう、「パパ休暇(出産後8週間以内に取得した場合の再取得の特例)」や「パパ・ママ育休プラス(父母共に育児休業を取得する場合は、子が1歳2カ月に達するまでの1年間)」などの特例も設けられています。

パパ・ママ育休プラスとは?

パパ・ママ育休プラスとは、両親が共に育児休業を取得する際、原則子どもが1歳までの休業可能期間が、1歳2カ月に達するまでに延長される制度のことです。

たとえば母親が2カ月の産後休業を取った後、さらに6カ月の育児休業を取得したとします。その後、父親が6カ月の育児休業を取得できるため、合計して2カ月プラスで休業できるのです。( 1人当たりの育休取得可能最大日数(産後休業含め1年間)は変わりません)

取得の要件

「パパ・ママ育休プラス」を取得するにはいくつかの要件をクリアする必要があります。

両親共に育児休業を取得する

  • 配偶者(母親)が子どもの1歳に達するまでに育児休業を取得している
  • 父親の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日以前である
  • 父親の育児休業開始予定日が、母親の育児休業の初日以降である

また、以下は取得ができないケースです。併せて紹介しましょう。

  • 入社して1年未満である労働者
  • 育児休業の申し出の日から1年以内に雇用期間が終了する労働者
  • 父親の育児休業開始予定日が子どもの1歳の誕生日を1日以上過ぎている場合

パパ休暇とは?

通常、育児休業の取得は原則1回までですが、母親の出産後8週間以内の期間内に、父親が育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても、再度、父親が育児休業を取得できるという制度です。

3.育児休業の対象者・要件

育児休業の対象者や要件はどのようになっているのでしょうか?育児・介護休業法では、育児休業を取得できる人は、原則「1歳に満たない子を養育する労働者」となっています。もちろん母親である女性だけはなく、男性も該当します。

派遣社員やパート、アルバイトは?

派遣社員やパート、アルバイトといった非正規雇用労働者は育児休業を取得できるのでしょうか。条件に該当する場合は有期契約の労働者でも育児休業を取得できます。条件は以下の通りです。

  • 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
  • 子が1歳6カ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでない

これらの条件を満たしていれば、育児休業を取得できます。

育児休業を取得できない労働者

反対に、育児休業を取得できない労働者は存在するのでしょうか?

日雇いで働いている人、育児休業を申し出た時点で同じ事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の有期契約労働者、育児休業が終了した後に引き続き雇用される見込みがない有期契約労働者などは、育児休業の対象除外者となります。

4.育児休業期間の調べ方

育児休業を取得できる期間について解説します。

女性が取得できる育児休暇は、「出産後に8週間の産休を取得した後、産休明けから子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで」の産後休暇を含めた1年間が育児休業期間として認められています。

男性が育児休業を取得する場合、基本的に1年間の取得が可能です。

具体例

以上を踏まえて出産から育児休業終了までを計算すると、下記のようになります。

出産予定日が2019/6/15だとして、

  • 産前休業:2019年5月5日から2019年6月15日にかけて
  • 産後休業:出産日の翌日2019年6月16日から 2019年8月10日にかけて
  • 育児休業:産後休業終了日の翌日2019年8月11日から2020年6月14日までの10カ月

産後休業+育児休業で合計12カ月です。

5.育児休業給付金(育休手当)とは?

育児休業給付金は、雇用保険法で定められている国からの支援金のこと。育児休業中に従業員は働くことができないため、国が従業員に支援金を給付します。

この制度は従業員にとって、収入面に関する不安の払拭、育児への集中、育児と仕事の両立実現といったメリットがあります。さらにこの支援金は非課税で、受給中は事業主を含めた被保険者にかかる社会保険料も免除されるのです。

育児休業給付金は、従業員が育児休業中に申請することで受給できますが、受給のための条件が設定されているため、誰でも受給できるわけではありません。

育児休業給付金の受給資格

育児休業給付金の受給資格はどんなものなのでしょうか。

  • 1歳未満の子どもがいる
  • 雇用保険の一般被保険者、または高年齢被保険者
  • 育児休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある

これらは正社員であれば問題なく満たしている可能性が高いです。一方、有期雇用契約の労働者は、休業開始時において以下のいずれにも該当していることが条件となります。

  • 同一の事業主のもとで、1年以上雇用が継続している
  • 子どもが1歳6カ月までの間に、その労働契約が満了することが明らかでない

従業員から育児休業給付金の希望があった際は、担当者は希望者の契約内容が支給条件を満たしているか確認しましょう。

育児休業給付金の支給要件

育児休業給付金を受給するためには、ほかにも満たさなければならない要件があります。

  • 支給単位期間の初日から末日まで被保険者である
  • 育児休業期間中の1カ月ごとに、休業開始前の1カ月当たりの賃金の80%以上の賃金が支払われていない
  • 育児休業期間中の1カ月ごとに、就業している日数が10日以下(10日を超える場合は、労働時間が80時間以下)である

もし1カ月の就業日数が10日以上となり支給要件から外れた場合、それに当たる賃金を次に育児休業給付金を取得した際の支給額の算定に用いる場合があります。これにより、次の子どもが生まれたときに受けられる育児休業給付金の額が減ることが考えられます。

6.育児休業給付金(育休手当)の計算方法

続いて、育児休業給付金(育休手当)の計算方法について解説します。

給付金の計算式は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(※育児休業開始から6カ月経過後は50%)」

休業に入る前に勤務先から受け取っていた月収の67%相当が受け取れる計算です。ただ育児休業から6カ月を経過すると、原則的には支給額が50%に下がります。また、育児休業給付金には月額49,848~301,299円という下限と上限が定められているのです。

また、育児休業給付金が支払われる期間中に、休業前の月給の80%を超える賃金が支払われたときは育児休業給付金が支給されないという決まりがあります。

休業開始時賃金日額の算出方法

続いて休業開始時の賃金日額の計算方法について解説します。アルバイトやパート勤務など月収が毎月一律でない労働者の場合、休業開始時の賃金日額と支給日数を把握する必要があります。

日額を計算するには、まず育休開始6カ月前から育休直前まで収入の合計を180(日)で割ります。このときの計算に使う収入は、保険料などが引かれる前の額かつ賞与は除いた額で計算してください。

この額に支給日数を掛けます。支給日数は育児休業中に月間(1支給単位期間)で仕事を休む日数を示し、一般的には30日が多いです。あとは上記の方法と同様で67%を計算すると、支給される育児休業給付金の正確な金額が算出できます。

具体例

たとえば、直近6カ月の収入が月平均20万円だったとしましょう。その場合、育児休業給付金の月額は20万×0.67=13万4000円となり、育児休業の開始から6カ月経過している場合は20万×0.5=10万円となるのです。このように1カ月当たりの給付金を算出できます。